『育成年代で多いケガに対する動きの特徴』

 

前回は、トラップの際のバランスに必要な片脚立位の安定に必要な要素についてお話させて頂きました。今回は、その要素と選手の実際の動きについて前回挙げた順に考えていきたいと思います。

 

 

①  脛骨荷重で立てること

育成年代の選手でも、ここの脛骨荷重で立つことができず骨盤や体幹が外側に流れてしまい腓骨荷重になっている選手が多くみられます。立位姿勢や歩行、ランニングの姿勢をみれば一目瞭然です。そのため、下腿や大腿部の外側や足部、股関節周囲の負担が増し、シンスプリントや腸脛靱帯炎、グロインペイン症候群などの筋・筋膜系の問題や過用による機能障害を引き起こす傾向がみられます。このような選手の多くは、脛骨荷重ができないことに加え、骨盤や股関節の問題も関係があるように考えています。なぜ脛骨荷重で立つことができないのかは、次の骨盤前傾位を保つことで考えていきたいと思います。

 

 

 

 

②  骨盤前傾位を保つことができること

育成年代の選手を見ていても骨盤の前傾がしっかり作れずに、下肢からの連動で繋がるはずの体幹の伸展を胸腰椎移行部〜腰椎の伸展にて代償するため、背臥位にて腰部が浮き上がってしまう場面が多々見られます。そのため、中学生や高校生で腰椎分離症やすべり症、ヘルニアなどの腰部疾患をもつ選手が増加しています。骨盤の前傾をしっかり作れない原因としては、生活習慣の影響から発達まで幅広い影響を受けるかと思いますが、多くは抗重力筋でもある腸腰筋(特に大腰筋)の機能不全がみられます。腸腰筋の機能不全により、トラップの際の支持脚でも骨盤の前傾が十分作れず、仙腸関節のうなずきが少ないことで、腸骨はout flareとなり股関節は外旋位となり、腓骨荷重が助長されてしまいます。また、腸腰筋が働けないことで、協調して働く内側ハムストリングの機能不全も同時に起こし、重心を内側へ止めることが阻害されさらに脛骨での荷重がしづらい環境となります。

 

 

 

 

③  前方への推進力を制限することができること

 骨盤を前傾位とすることが困難であることでさらなる影響を与えます。前回も出てきましたが、骨盤が後傾位で膝関節が前方にでて前足部荷重となるため、そこからまた重心を後方の踵に戻して動き直すことで次の動作の遅れに繋がります。一瞬のスピードの低下が相手に詰めるチャンスを与え、よりボールコントロールが難しくなります。また、骨盤が後傾位で前足部荷重となることにより、膝の屈曲モーメントが高まり、その制御として表層の大腿四頭筋優位での動作となります。股関節や膝関節を大腿四頭筋優位での制御となることで、本来機能すべきインナー系の筋活動が阻害され、粗雑な動きになってしまいます。さらに、足底内での重心移動が十分に行えず、windlass 機構を十分に活用することができないことで足趾や足底筋の過活動が生じ、踵周囲や足底、下腿部に対しても問題が生じやすい状態となってしまいます。

 

 

 

 

 

④  体幹—上半身がフリーになることができること

多くの選手は、下半身と体幹の繋がりは見えてきているものの、そこに上半身の影響を感じ取っている選手は少ないように思えます。そのため、トレーニングも上半身と下半身を別々にトレーニングしてしまい、動作の中で文節的に動くことを難しくしています。トラップするための足、支持脚に対して、上半身がバランスをとるために使ってしまい、手を使って相手を制すことや距離を図ることが難しくなります。そのため、相手の寄せを近づけてしまい、自らにプレッシャーをかけてしまうことになります。また、上半身がバランス活動に参加することにより、胸郭を含めた体幹の回旋や屈伸の動きが制限され、一部に過剰なストレスをかけてしまいます。その中で過剰な体幹の回旋を求められることで肋骨や胸骨に負担が掛かってしまい慢性疼痛になりかねません。

 

 

 

 

 

これらの要素を知っておくこと、自分はどうなっているのかを内観することが育成年代からさらに上の世代に成長していくためには必要な要素ではないかと思います。

トラップの際の姿勢も含めて、育成年代でしっかり動きの基礎作りをしていき、ただの筋力トレーニングではなく、動作に直結するトレーニングの考案が求められように現場で感じております。